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2008年7月1日
AUDIXのISO審査についての考え@
−ISO 9001の審査における適用除外について−
AUDIX Registrars株式会社
代表取締役 齋藤 喜孝
◆ ISO 9001で常に話題となる「適用除外」
品質マネジメントシステムの審査で、私たち審査員側と、企業側の方々との間でよく話題となるのが「適用除外」についての考え方です。
ご存じの通り、「適用除外」とは、ISO 9001:2000の要求事項について、組織に該当する活動が存在しない場合には適用を除外することができる仕組みです。
た
だし、ISO9001:2000の1.2項では、「適用除外」について「除外を行うことが顧客要求事項及び適用される顧客要求事項や規制要求事項を満たす
組織の能力、または責任に何らかの影響を及ぼすものであるならば、この規格への適合の宣言は受け入れられない」と述べられており、システムを構築する上で
は慎重な判断が必要です。組織がお客様に製品、サービスを提供する上で、何か能力や責任に問題点を残すのなら適用除外は認められない、と言い換えてもいい
かも知れません。
◆ 「適用除外」についての、AUDIXの基本の考え
私たちAUDIXでは具体的に「適用除外」をどのように考えているのかについて、ISO9001:2000の7.3項「設計・開発」と7.5.2項「製造及びサービスに関するプロセスの妥当性確認」を例に挙げ、説明したいと思います。
《7.3 「設計・開発」》
たとえば、病院での審査で7.3項を考える場合、「治療計画の立案」、看介護施設における「ケアプランの立案」などが設計開発に該当すると考えられます。この場合など、適用除外として認めるべきかどうかは、審査機関、また審査員によっても判断がさまざまなようです。
結論から言えば、AUDIXでは「設計・開発」をあてはめてもよい、あるいはあてはまる活動がある場合に、「絶対に適用除外をしてはいけない」とは考えま
せん。「適用除外」とすることで組織の能力や責任に支障がなく、他の規格要求事項によってそれらのプロセスが運用され、製品やサービスに影響がないことを
審査において確認できるのなら、無理に7.3項「設計・開発」を入れる必要はなく、適用除外を許容する考えです。
《7.5.2 「製造及びサービスに関するプロセスの妥当性確認」》
また、7.5.2項については、規格によれば「製造及びサービス提供の過程で結果として生じるアウトプットが、それ以降の監視又は測定で検証することが不
可能な場合」、あるいは「製品が使用され、またはサービスが提供されてからでしか不具合が顕在化しないプロセス」が妥当性確認の対象となります。
製造プロセスの中で全数検査は不可能としても、統計的なサンプリング手法を用いての検査によって検査が実施され、そのロットが問題ないと判断されている場合には、アウトプットの検証が、完全ではないにせよ検証できているともいえます。
これもいろいろな考え方がありますが、AUDIXでは、そのような説明があり、内容、も妥当と判断できれば、7.5.2の除外を認める考えです。
ただし、7.5.2項は所定の運用条件・方法、手順の設定、適切な設備の使用あるいは適格な要員を起用することによって、確実な製品あるいはサービスを提
供するという考えが根底にありますから、7.5.2項を適用するとこれらのプロセスの確実性と、管理方法の継続的改善が図れることになります。
審査を行う立場から、無理に押し付けてはいけませんが、7.5.2項は「人・設備・手順」を3点セットにして間違いのない製品やサービスを提供しようという考え方ですので、質の高い製造・サービスを提供して、その方法などを常に改善する有力なツールになり得ます。
そこで、積極的に7.5.2を組み込むことを「改善の機会」として推奨しています。
◆ 「適用除外」がお客様(組織)のためになるかどうかが、ポイント
要は、組織の能力と責任に支障をもたらさないなら無理にマネジメントシステムに取り入れなくともよく、除外を「可」とします。一方、取り入れることによって「組織のため、お客様のため」になるなら「適用除外」としないよう奨める、というのがAUDIXの考えです。
とにかく、審査員側としては、組織の業務の実態を見ながら、「適用除外」としたことでマネジメントシステムに問題がないかどうかを、しっかり見極めるのが務めだと思います。
そして審査を受けていただく組織の方々にも、「適用除外」を再検討し、より良い製品・サービス提供のために品質マネジメントシステムを有効活用していただければ、長年ISO審査に携わって来た身として、これに勝る喜びはありません。
2007.9.6、 JAB認定授与式にて。 (財)日本適合性認定協会 井口新一専務理事と筆者
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